法人商談の全体像
商談は「売り込み」ではなく「共創」のプロセス
「今日の商談、うまくいくかな...」
初めての法人商談を前に、多くの人が感じる不安です。でも、ちょっと待ってください。その不安の正体は「うまく売り込めるか」という視点から来ていませんか?
実は、本当に成功する商談は「売り込む」ものではありません。クライアントと一緒に、より良い未来を創り上げる「共創」のプロセスなのです。
この章では、Harukazeが7年間の法人営業で培ってきた商談の全体像をお伝えします。単なるテクニック集ではなく、クライアントから「Harukazeさんとなら安心して進められる」と言われる、信頼関係構築の本質をお話しします。
商談の5つのフェーズ - 信頼から始まり、未来で終わる
商談の流れを俯瞰する
成功する商談には、明確な流れがあります。それは、まるで良質な物語のように、起承転結がはっきりしているのです。
【商談の5つのフェーズ】
1. アイスブレイク(信頼の土台作り)- 約10分
2. ヒアリング(課題の発見と共有)- 約20分
3. 提案(解決策の共創)- 約15分
4. クロージング(決断のサポート)- 約10分
5. ネクストアクション(関係の継続)- 約5分
重要なのは、この流れを機械的にこなすのではなく、相手の温度感に合わせて柔軟に調整することです。
フェーズ1: アイスブレイク - 最初の3分が全てを決める
なぜ重要なのか
人は最初の3秒で相手の印象を決め、3分でその印象を固めると言われています。この時間で「この人となら話したい」と思ってもらえるかが、商談の成否を大きく左右します。
実際の現場では
NG例:「本日はお忙しい中、お時間をいただきありがとうございます」(定型文)
OK例:「先ほどサイトを拝見したんですが、7万フォロワーって本当にすごいですね!どうやってここまで増やされたんですか?」(具体的な関心)
相手の事業や成果に対する genuine な関心を示すことで、自然と会話が弾み始めます。
フェーズ2: ヒアリング - 聞き上手は売り上手
なぜ重要なのか
多くの人は「何を話すか」ばかり考えますが、商談の本質は「何を聞き出すか」にあります。相手の本当の悩みや願望を引き出せなければ、的外れな提案になってしまいます。
ヒアリングの3層構造
- 表層(What): 何をしたいのか
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「LPを作りたい」「デザインを改善したい」
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中層(How): どのように実現したいのか
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「月商100万円を目指している」「作業時間を削減したい」
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深層(Why): なぜそれが必要なのか
- 「家族との時間を増やしたい」「業界のリーダーになりたい」
深層まで掘り下げることで、クライアントも気づいていなかった本質的なニーズが見えてきます。
フェーズ3: 提案 - 未来を一緒に描く
なぜ重要なのか
提案は「これを買ってください」ではなく、「こんな未来を一緒に作りませんか」というお誘いです。手段ではなく、結果にフォーカスすることが重要です。
効果的な提案の構造
1. 現状の確認(共通認識)
「先ほどお聞きした通り、現在は月に10時間をスライド作成に使われているんですよね」
2. 理想の未来(ビジョン)
「もしその10時間をYouTube撮影に使えたら、月に5本は追加で投稿できますよね」
3. ギャップの可視化(課題)
「つまり、スライド作成が事業成長のボトルネックになっているということです」
4. 解決策の提示(手段)
「私たちがスライド作成を巻き取ることで、〇〇様は本来やるべきことに集中できます」
フェーズ4: クロージング - 背中を押す、でも押し売りはしない
なぜ重要なのか
どんなに良い提案でも、決断を促さなければ前に進みません。ただし、強引なクロージングは関係性を壊します。相手が自然に「やりたい」と思える状況を作ることが大切です。
クロージングの黄金法則
- 期限を設ける: 「いつまでにご返答いただけそうですか?」
- 希少性を演出: 「実は来月は既に予約が埋まりつつあるんです」
- 小さな一歩から: 「まずは1ヶ月お試しでいかがですか?」
フェーズ5: ネクストアクション - 点を線にする
なぜ重要なのか
商談は「その場で終わり」ではありません。次につながる関係性を築くことで、単発の取引が長期的なパートナーシップに発展します。
次につながる一言
「今回のプロジェクトがうまくいったら、次は〇〇も一緒にやりましょう!」
「月次でお打ち合わせさせていただいて、継続的に改善していきましょう」
商談で意識すべき3つの軸
1. 感情軸 - 「好き」から始まる信頼関係
人は論理で理解し、感情で行動します。どんなに論理的に正しい提案でも、感情が動かなければ決断には至りません。
感情を動かすポイント - 明るい表情と声のトーン - 相手の成功を心から喜ぶ - 失敗談も含めた自己開示
2. 論理軸 - 数字とファクトで納得感を
感情だけでは不十分です。特に法人の意思決定には、論理的な裏付けが必要です。
論理を強化するポイント - 具体的な数値での効果測定 - 他社事例での実績提示 - ROIの明確な提示
3. 未来軸 - ビジョンの共有で一体感を
目先の課題解決だけでなく、中長期的なビジョンを共有することで、真のパートナーシップが生まれます。
未来を描くポイント - 1年後、3年後の理想像を聞く - その実現に向けたロードマップを描く - 一緒に成長していく関係性を提案
よくある失敗パターンと対処法
失敗例1: 一方的なプレゼン地獄
状況: 用意してきた資料を最初から最後まで説明し続ける
なぜダメなのか: 相手のニーズを無視した自己満足のプレゼンは、聞く気を失わせます
改善策: - 資料は補助ツールと割り切る - 相手の反応を見ながら、必要な部分だけ使う - 「ここまでで何か質問はありますか?」を頻繁に挟む
失敗例2: 価格の話を避ける
状況: 「詳細は見積もりを送ります」で逃げる
なぜダメなのか: 相手は概算でも知りたがっています。不透明さは不信感を生みます
改善策: - 「ざっくりですが〇〇万円くらいです」と概算を伝える - 予算感を先に聞いて、それに合わせた提案をする - 高いと感じさせない価値の伝え方を工夫する
失敗例3: 相手のペースに飲まれる
状況: 相手の要求に全て「はい」と答えてしまう
なぜダメなのか: プロとしての価値を自ら下げ、後々トラブルの元になります
改善策: - できないことは「代わりにこういう方法はどうですか」と代案を出す - 専門家として「それよりもこちらの方が効果的です」と提案する - 安請け合いせず、確認が必要なことは持ち帰る
実践への第一歩 - 今日から始められること
商談スキルは一朝一夕には身につきません。でも、今日から始められることがあります。
今すぐ実践できること
✅ 次の商談前に、相手の事業について15分リサーチする ✅ 鏡の前で笑顔の練習をする(口角を上げるだけで印象が変わります) ✅ 「御社の事業について教えてください」という質問を用意しておく
1週間で身につけたいこと
✅ ヒアリングシートを作成し、聞くべき項目を整理する ✅ 自社の強みを1分で説明できるようにする ✅ よくある質問への回答を準備しておく
1ヶ月で目指したいこと
✅ 商談の録画を見返し、改善点を見つける習慣をつける ✅ 成功パターンを言語化し、チームで共有する ✅ クライアントから「また会いたい」と言われる関係性を築く
最後に - 商談は人と人との出会い
商談テクニックをたくさん紹介してきましたが、最も大切なことは「目の前の人に真摯に向き合うこと」です。
クライアントも人間です。不安もあれば、期待もあります。その気持ちに寄り添い、一緒に成功を目指すパートナーとして接することができれば、自然と良い関係性が生まれます。
「この人となら、うまくいきそうだ」
そう思ってもらえる商談を、一緒に作っていきましょう。次のページから、より具体的なテクニックをお伝えしていきます。
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