クロージング成功の秘訣
決断を後押しする心理テクニック - 背中を押す、でも押し売りはしない
「じゃあ、検討しておきます」
商談の最後にこの言葉を聞いて、がっかりした経験はありませんか?1時間かけて説明し、相手も興味を示していたのに、結局決断してもらえない...
実は、多くの商談が失敗する理由は、クロージングの技術不足にあります。どんなに良い提案でも、最後の一押しがなければ、相手は行動に移せません。
この章では、相手に嫌われることなく、自然に「お願いします」と言ってもらえるクロージングの極意をお伝えします。押し売りではなく、相手の決断をサポートするという意識が成功の鍵です。
なぜクロージングで失敗するのか
日本人特有の「遠慮」という壁
よくある失敗パターン
営業:「...ということで、いかがでしょうか?」
クライアント:「なるほど、良さそうですね」
営業:「じゃあ、ご検討ください」(←ここが問題!)
クライアント:「はい、検討します」
→ その後、連絡なし
遠慮して最後の一押しを避けた結果、せっかくの商談が無駄になってしまうのです。
「検討します」の本当の意味
実は「検討します」には、3つの意味が隠れています:
- 本当に検討が必要(20%)
- 社内承認が必要
-
予算の確認が必要
-
迷っている(60%)
- 決め手に欠ける
-
不安が残っている
-
断り文句(20%)
- 興味がない
- 他で決めている
重要なのは2番目の60%。この層は、適切なクロージングで「YES」に変えられる可能性が高いのです。
小さなYESを積み重ねる - コミットメントの階段
一貫性の法則を味方につける
人は一度「YES」と言ったことに対して、一貫性を保とうとする心理があります。これを活用し、小さな合意を積み重ねていきます。
実践例:階段を上るように合意を得る
ステップ1:「デザインの重要性は感じていただけましたか?」
→「はい」
ステップ2:「現状のままだと、機会損失が続きますよね?」
→「そうですね」
ステップ3:「できれば早めに改善したいですよね?」
→「はい、そう思います」
ステップ4:「でしたら、まず小さく始めてみませんか?」
→「それなら...」
マイクロコミットメント戦略
大きな決断を小さく分解する
❌ NG例:「年間契約で100万円です。どうですか?」
✅ OK例:
「まず1ヶ月、お試しプランから始めませんか?」
「最初はLPだけ、うまくいったら他も」
「とりあえず、詳細な見積もりを作らせてください」
人は大きな決断より、小さな決断の方がしやすいものです。
決断の期限を設ける技術
なぜ期限が必要なのか
期限がないと、人は決断を先延ばしにします。適切な期限設定は、相手の決断を助ける優しさでもあるのです。
効果的な期限の作り方
1. 自然な理由を添える
「実は来月から繁忙期に入るので、
今月中にご決断いただければ、
優先的にスケジュールを確保できます」
2. 相手にメリットのある期限
「月末までにご契約いただければ、
今月分は日割りではなく、
来月からのスタートでOKです」
3. 限定性を演出
「このプランは月3社限定なんです。
今月はあと1枠なので、
金曜日までにお返事いただけますか?」
「スケジュール確保」という魔法の言葉
営業:「いつ頃お返事いただけそうですか?」
クライアント:「来週中には...」
営業:「承知しました。では来週まで、
デザイナーのスケジュールを仮押さえしておきますね」
この一言で、相手は「準備してもらっている」というプレッシャーを感じ、返答率が格段に上がります。
感情に訴えかける5つのトリガー
1. 損失回避の心理
人は「得をする」より「損をしない」ことを重視します。
実践例
「このまま何もしないと、
毎月100万円の機会損失が続きます。
3ヶ月で300万円、1年で1,200万円...
もったいないと思いませんか?」
2. 希少性の演出
実践例
「実は〇〇様の業界は、まだ担当したことがないんです。
もしご一緒できれば、業界内で独占的に
我々のノウハウを活用いただけます」
3. 社会的証明
実践例
「先週も同じ規模の会社様から
2社お申し込みいただきました。
皆さん、同じような課題を感じているようです」
4. 権威性の活用
実践例
「この手法は、マーケティングの権威である
〇〇先生も推奨している方法です。
実際、大手企業の8割が採用しています」
5. 好意の返報性
実践例
「〇〇様とはぜひ長くお付き合いしたいので、
特別に初回は30%オフでご提供します。
その代わり、成果が出たら
事例として紹介させてください」
最後の一押し - プロが使う7つのクロージング話法
1. 二者択一話法
決めるか決めないかではなく、AかBかを選んでもらう。
「スタートは来月からと再来月から、
どちらがよろしいですか?」
「プランAの松コースと、プランBの竹コース、
どちらがご希望に近いですか?」
2. 仮定話法
仮に進めるとしたら、という前提で話を進める。
「仮に進めるとしたら、
いつ頃から始めたいですか?」
「もし導入するとしたら、
最初に改善したいのはどこですか?」
3. サマリー話法
合意事項を整理して、最終確認する。
「整理すると、
・LPの改善で問い合わせ倍増を狙う
・予算は50万円以内
・3月までに完成
ということでよろしいですか?
でしたら、さっそく進めましょう」
4. 黙秘話法
提案後、あえて黙って相手の反応を待つ。
営業:「以上が提案内容です」
(5秒間の沈黙)
クライアント:「...分かりました。やりましょう」
沈黙に耐えられず、つい喋ってしまうと効果が薄れます。
5. 限定話法
今だけの特別条件を提示する。
「通常は前金をいただいていますが、
〇〇様は信頼できる方なので、
完成後のお支払いで結構です」
6. ダメ押し話法
ほぼ決まりかけた時に、最後の一押し。
「あ、それと大事なことを忘れていました。
今回ご契約いただければ、
3ヶ月間の無料サポートをお付けします」
7. 引き話法
あえて一度引いてみる。
「...とはいえ、無理に今決めなくても大丈夫です。
じっくり検討されてください。
ただ、来月になると繁忙期で...」
断られた時の切り返し術
「予算がない」への対応
「予算の件、よく分かります。
でも、これは投資なんです。
月10万円の投資で月50万円のリターンなら、
実質的にはプラスですよね?
それに、分割払いもできますし、
成果が出てからの後払いプランもあります」
「もう少し考えたい」への対応
「もちろんです。大切な決断ですから。
ただ、何か不安な点が残っているのでは?
遠慮なく聞いてください。
それとも、社内で相談が必要ですか?
でしたら、説明資料をご用意しましょうか?」
「他社と比較したい」への対応
「比較検討は当然です。
ぜひ他社さんともお話しください。
ただ、比較の際は価格だけでなく、
・実績の数と質
・サポート体制
・長期的な関係性
も含めて検討してくださいね。
あ、比較しやすいように、
提案内容を一覧表にまとめましょうか?」
関係を継続させる「ネクストアクション」
なぜ次回の約束が重要か
商談の最後に次のアクションを決めないと、関係が途切れてしまいます。
効果的なネクストアクションの作り方
1. 具体的な日時を決める
❌「また連絡します」
✅「来週の水曜日、同じ時間はいかがですか?」
2. 相手にもアクションを求める
「次回までに、現在の月間アクセス数を
教えていただけますか?
より具体的な提案ができます」
3. 価値ある情報を約束する
「次回、同業他社の成功事例を
詳しくお話しします。
きっと参考になると思います」
食い気味の追加提案
タイミングが全て
相手が前向きになった瞬間を逃さず、次の提案を投げかける。
実践例
クライアント:「じゃあ、LPお願いします」
営業:「ありがとうございます!
あ、そうだ!(食い気味に)
LPを作るなら、広告バナーも
統一感を持たせた方が効果的です。
セットなら20%オフにしますが...」
関係性の継続を前提に
「今回のプロジェクトが成功したら、
次は〇〇もお手伝いさせてください!
一緒に事業を大きくしていきましょう」
クロージング力を高める練習法
ロールプレイング
練習方法 1. 同僚と客役・営業役を交代で 2. 断り文句への切り返しを練習 3. 録画して話し方をチェック
日常での実践
日々の訓練 - レストランで追加注文を促される時の話法を観察 - 買い物で店員のクロージングを分析 - 家族への提案で練習
成功体験の蓄積
小さな成功から始める - まず既存客への追加提案から - 断られても次につながる終わり方を - 成功パターンを記録・分析
まとめ - クロージングは愛である
クロージングは「売りつける」ことではありません。相手の成功を心から願い、決断を助けることです。
相手が迷っている時、背中を押してあげる。 不安がある時、一緒に解決策を考える。 決断できない時、小さな一歩から始める提案をする。
これらは全て、相手のことを思う「愛」から生まれる行動です。
今日から実践すること
✅ 「検討します」で終わらせず、次のアクションを決める ✅ 小さなYESを3つ以上もらってから、本題に入る ✅ 断られても、笑顔で次の提案をする
覚えておいてほしいこと
クロージングを避ける営業は、 相手の成功に責任を持たない営業である。
勇気を持って、相手の決断をサポートしましょう。 その先に、本当の信頼関係が待っています。
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